くくり
11月某日、マレーン・S・ジンノウチが失踪した。
誘拐かはたまた自身の意思での逃亡か、定かではない。
少なくとも行方不明になったその日執り行われた、成人の儀式によって魔力は削ぎ落とされ、
とても一人では逃げきれない状態にあったことは事実だ。
禁忌
師匠が桜を選んだのは、その膨大な魔力に目を付けたから。
今回の成人の儀式で得る桜の魔力と、
自身が成人の儀式を受けた時捧げた魔力を盗み出して、かけあわせ、
彼の亡くなった婚約者を蘇生させるため。
それだけが望み。それだけが利用価値。桜は知らないこと。
誰も知らないこと。
師匠が幾度も桜に逃げてもいいと告げたのは、
禁忌を犯すことへの畏れと幸せになどなれない桜への憐れみからきたもの。
今回の成人の儀式で得る桜の魔力と、
自身が成人の儀式を受けた時捧げた魔力を盗み出して、かけあわせ、
彼の亡くなった婚約者を蘇生させるため。
それだけが望み。それだけが利用価値。桜は知らないこと。
誰も知らないこと。
師匠が幾度も桜に逃げてもいいと告げたのは、
禁忌を犯すことへの畏れと幸せになどなれない桜への憐れみからきたもの。
草原だけが広がる太陽の国
速度を上げるために使用した五十人の魔力と引き換えに
ほぼ一日をかけて船は、少女の傍らに立つ師である男の故郷へと帰港した。
船から降りる面々はどれをとってもその顔には疲労が色濃く刻まれて、
少女とて例外ではなくぐったりと疲れ切った足取りで四年ぶりの地へ降り立った。
見上げる先の遠い風景は緩やかに上がっていくような草原の国。
一つしかない山が国境となっているのが変わらず見える。
「ジャクリーン兄さまに義姉さま。お帰りなさい。」
